【始めに】
前の章で計測した腫瘍細胞数がBig Bang Modelに従って増殖した結果の細胞数と仮定して、その腫瘍に対する分割照射後の線量・効果関係をLQモデルに従うと仮定する。式(3)でしめした、GLQモデルでは加速再増殖を仮定しているので、局所制御に必要な最少細胞数の推定が難しくなる。そこで、ここでは、式(3)で加速再増殖が極小となると仮定して1とした。局所制御に“Total Cell Kill”が必要かを以下の方法で解析して、臨床経験をもとに妥当性を考察する。

 

 

【方法】

Big Bang Modelに従い腫瘍径が1cm〜5cmを目安に増殖する腫瘍をランダムに2500個発生させる。それぞれの腫瘍に対して60Gy/30fr/6weeksの分割照射を行い、前述のLQモデルに従い細胞死に至ると仮定する。腫瘍に含まれる各クローンの最小値(1未満は0とする)を加えた細胞数を、その腫瘍の生残細胞数とする。”Total Cell Kill”が必要な場合は、生残細胞が1未満の場合である。腫瘍径の大きさごとに局所制御率を求める。なお、局所制御に”Total Cell Kill”は必要ないと仮定して、例えば、生残細胞が99個まで、あるいは999個までは局所制御できると仮定したときの局所制御率を計算する。

 

 

【結果】
Big Bang Modelに従って増殖した腫瘍の大木に従って、ここではT0(≦1cm)、T1(>1cm&≦2cm)、T2a(>2cm&≦3cm)、T2b(>3cm&≦4cm)、T3a(>4cm&≦5cm)、T3b(>5cm)と定義すると、局所制御に”Total Cell Kill”が必要とすれば、T0でも局所制御率は26.53%と低くなる。当然腫瘍が大きくなるに従って局所制御率は低下する。放射線治療でしばしば遭遇する2〜3cmの腫瘍でも60Gy/30frの照射の局所制御率が8.85%とかなり低い。そこで、局所制御が得られる最少の細胞数のThresholdをあげて、100と1000とすると、T0の腫瘍での局所制御率はそれぞれ59.37%と73.83%となり、T2aの腫瘍でそれぞれ26.84%と58.40%となった(図28)。局所制御の最少の細胞数のThresholdを設定して(1,100,1000)、それぞれ2500個の腫瘍を作成して局所制御の有無で分類すると、全てのThresholdレベルで局所制御が得られる腫瘍径は有意に小さいことがわかる。また、Thresholdの細胞数が多いほど局所制御および局所再発する腫瘍のサイズが大きくなることが分かる(図29)。腫瘍を構成するクローンと局所制御・局所再発の関係をみた。ここで想定したクローンの放射線感受性は表2に示した7種類である。”Total Cell Kill”が必要とした場合には局所制御にHFLIIIやSCC61が含まれる場合に良好のようであるが、局所再発にはクローンの感受性に特徴的な傾向は無いようである。一方、Thresholdの細胞数が多くなると、放射線抵抗性クローンであるSQ20Bが含まれることが、局所再発に決定的になっていることがわかる(図30)。

 

図28
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図29
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図30
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【考察】

様々な腫瘍に対して根治線量として60.0Gy/30fr/6weeksは標準的な線量として妥当とされている。この分割照射で治療した腫瘍の局所制御率を思い浮かべると、本シミュレーションの結果、中間的な放射線感受性の腫瘍の局所制御率としては”Total Cell Kill”を仮定した場合はきわめて低い値であった。局所制御が得られる残存細胞のThresholdをそれぞれ100、1000と仮定すると、図28に示すように局所制御率は高くなり、臨床的な局所制御率の妥当性が示唆される。固形腫瘍の放射線治療による局所制御には”Total Cell Kill”は必要ない可能性がある。局所再発には放射線抵抗性クローンの存在が決定的である。腫瘍内の放射線感受性の異なる部位を同定する方法を確立する研究が必要であろう。