【始めに】
分割照射の線量・効果関係は1次-2次の指数関数で外挿できることが実験的に示されている(LQ model)。この関数は線量0で初期値1のマイナスの指数関数であり、極限値は正から0に収束する。実際の腫瘍では初期値の腫瘍細胞数と予定の分割照射後の腫瘍細胞数の極小値に応じて、腫瘍の局所制御の可否が決定される。根治的照射をおこなう腫瘍に関して、照射前にかなりの大きさの腫瘍を切除することはほとんど無いため、個々の照射患者の照射前の総腫瘍細胞数を知ることはできない。しかし、LQモデルで分割照射の線量・効果関係を推定する以上、照射前の腫瘍細胞数を推定することは重要である。そこで、初期治療として外科的に切除した腫瘍の単位体積当たりの腫瘍細胞数を指定することを試みた。

 

【方法と対象】

乳癌と診断され、乳房温存術または乳房切除術を受けた患者を対象とした。ヘマトキシリンエオジン染色(HE染色)した標本を20倍の拡大率で観測する。200v × 200μm の範囲の腫瘍細胞数をカウントする(図24)。同様なカウントを異なる5視野に対して行い、5倍して1mm2 中の細胞数(X)とする。次に、スライド標本中の腫瘍細胞が最大断面で切断されている細胞を見つけ、長径を測定する。同様に10個の腫瘍細胞の長径を測定して、平均値 Y(μm)を求める。以上の計測から1mm3中の腫瘍細胞数(Z)は1000 X/Yで求められ、1cm3 中の腫瘍細胞数は1000Zで表される。

 

図24
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【結果】
51例の乳癌に対して計測した(scirrhous 26, solid-tubular 9, papillotubular 4, その他)。Scirrhousとsolid-tubular の間では細胞数に有意差は認めなかった。1mm3 中の細胞数は平均で478,446 (Range 136,087〜1,200,250)であった(図25)。腫瘍細胞の大きさと細胞数は指数関係を示した(図26)。以上の結果より球形の腫瘍の大きさと、その中の腫瘍細胞数を推定した(図27)。

 

図25
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図26
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図27
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【考察】乳癌組織1cm3(1ml)中の腫瘍細胞数は約5億個、直径1cmの球状の腫瘍で約2.5億個で構成されている可能性がある。腫瘍細胞の長径の長さと単位体積当たりの腫瘍細胞数は指数関係で外挿できる。腫瘍の大きさと腫瘍細胞数がわかれば、LQモデルで局所制御の可否を推定できる可能性がある。